今回は、食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価と平均摂取量についてのお話です。
食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について
平成27年6月、FDA(米国食品医薬品庁)は、トランス脂肪酸が多く含まれる部分水素添加油脂は、GRAS(従来から使われており安全が確認されている物質)ではないとして、食品に使用するためにはFDAの承認が新たに必要(2018年から)と決定しました。
このFDAによる規制の対象は、トランス脂肪酸ではなく、部分水素添加油脂(マーガリンやショートニング等の原料)です。
さらに、規制の内容は、使用禁止ではなく、現在GRASとなっており食品に自由に使用できる部分水素添加油脂を、3年後にGRASの対象ではなくするということです。
新規にFDAに承認申請し認められれば、使用可能とのことです。
今回の米国の規制は、トランス脂肪酸の削減を目的としています。しかし、日本と米国では脂肪やトランス脂肪酸の摂取量が異なることに留意する必要があります。
<トランス脂肪酸の平均摂取量(エネルギー比)※>
○アメリカ:2.2% ○日本:0.3%
※食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価書より
トランス脂肪酸とは、脂質の構成成分である脂肪酸の一種です。WHOでは、心血管系疾患のリスクを低減し、健康を増進するための目標として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー比1%未満に抑えるよう提示しています。
諸外国では、トランス脂肪酸摂取量がこのWHOの目標を超えている国や、我が国やドイツのように目標値内におさまっている国もあり、その対応は各国の状況に合わせて様々です。
日本では、食品に含まれるトランス脂肪酸について、食品健康影響評価を行い、平成24年3月8日の食品安全委員会において評価書を確定し、消費者庁、厚生労働省、農林水産省に通知しました。
大多数の日本国民のトランス脂肪酸の摂取量は、WHOの目標を下回っています。脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要がありますが、通常の食生活では、健康への影響は小さいと考えられます。
また、例えばマーガリン等におけるトランス脂肪酸の量は、銘柄にもよりますが、平成22年のものは平成18年のものより減少しており、低減に向けた取組が行われています。
さらに、食品中のトランス脂肪酸を低減すると、飽和脂肪酸の含有量が増加する傾向があり、 飽和脂肪酸については、摂取目標量の上限(エネルギー比7%)を超える性・年齢階級があることに留意が必要と考えます。
<日本人の飽和脂肪酸の年齢層別摂取量中央値(エネルギー比)※>
女性:7.4%(20〜29歳)、7.3%(30〜39歳)
※食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価書より
脂質自体は重要な栄養素でもありますが、近年は、食生活の変化により脂質の摂取過剰が懸念されており、トランス脂肪酸だけを必要以上に心配せず、脂質全体の摂取量に十分配慮し、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
(出典:内閣府食品安全委員会HP)