すこやか「生活習慣病とキチン・キトサン」

現在、我が国では、色々な健康食品が健康維持、生活習慣病の予防に繁用されている。我々はキチン・キトサンの薬理作用についての研究を続けており、今回は、キトサンの抗潰瘍作用についての実験データについて紹介する。

今までに、皮膚損傷治療薬として開発された薬剤を新に消化性潰瘍治療薬へ転用したり、逆に消化性潰瘍治療薬を皮膚損傷治療薬に応用した例はいくつか報告されている。それ故、創傷治癒促進作用を持つキチン・キトサンにも抗潰瘍作用を持つことが予想される。

今回、私どもの研究では、低分子キトサン(分子量25000~50000)、高分子キトサン(分子量500000~1000000)およびキチン(分子量1000000以上)のラットのエタノール胃粘膜障害と酢酸胃潰瘍治癒に対する効果を比較検討した。

その結果、低分子キトサンが最も強力な胃粘膜保護作用(エタノール胃粘膜障害防御作用)と胃潰瘍治癒促進作用を示すことが判明した。低分子キトサンは胃内で胃酸に容易に溶解し、胃粘膜上で粘性ゲルを形成し、粘膜を被覆保護すると考えられる。

それ故、低分子キトサンの抗潰瘍作用秩序の一部として、潰瘍面の被覆保護作用が関与している。また、低分子キトサンには弱い制酸作用と胃粘膜増加作用が認められ、これらの作用も低分子キトサンの抗潰瘍作用に関係しているものと思われる。

キトサンは分子量の違い、胃内での粘度および溶解性の違いが、これらの作用に影響すると考えられます。

キチン・キトサンは安全性の面からも優れており、生活習慣病の予防には、正しい生活習慣を身につけることが大切であるが、さらにキチン・キトサンのような健康食品を加えることは有益と考えられます。

(医学博士 伊藤 幹雄 先生)