健康生活情報☆すぐにわかるトランス脂肪酸(第5話)

今回は、すぐにわかるトランス脂肪酸についてのお話です。6回に分けてお話します。(第5話)

日本では何をしているの?

  • 農林水産省は、平成17~19年度(2005~2007年度)に実施した調査研究で、日本人が食品からとっているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96グラムであると推定しました。これは平均総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当します。
  • 食品安全委員会は、平成24年(2012年)3月に、食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価(リスク評価)の結果外部リンク〕を公表しました。この評価では、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しており、「日本人の大多数がエネルギー比1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と結論しました。
  • 一方、日本人でも、食事からとる脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸をとる量も多くなることが報告されています。食塩や脂質を控えめにし、いろいろな食品をバランスよく食べるという食生活指針の基本を守れば、トランス脂肪酸によって心臓病のリスクが高まる可能性は低いと推定されます。 農林水産省は、健やかな食生活を送るためには、トランス脂肪酸いう食品中の一成分だけに着目するのではなく、現状において日本人がとりすぎの傾向にあり、生活習慣病のリスクを高めることが指摘されている脂質そのものや塩分を控えることを優先すべきと考えています。
  • 最近では、日本でも食品事業者による自主的な努力によって、トランス脂肪酸の濃度がこれまでよりも低い食品が販売されています。天然にあるトランス脂肪酸を減らすのは難しいと考えられていますが、油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸は、新たな技術を利用することで減らすことができます。食品としての好ましい品質を維持するとともに、飽和脂肪酸を増やさないようにしながら、食品事業者は油脂の加工工程でできるトランス脂肪酸をできるだけ減らすための対策を進めています。
  • 農林水産省が、令和4-5年度に市場に流通する油脂類や、油脂を原材料とする加工食品を調査した結果、平成18-19年度や平成26-27年度に調査した結果と比較して、トランス脂肪酸の濃度が低くなっている傾向にあることが確認できました。
  • 食品安全委員会は、食品からトランス脂肪酸をとることによる日本人の健康への影響について、「通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」としています(平成24年(2012年)3月)。日本では、食品中のトランス脂肪酸について、表示の義務や濃度に関する基準値はありません。また、トランス脂肪酸だけではなく、不飽和脂肪酸飽和脂肪酸コレステロールなどの他の脂質についても表示の義務や基準値はありません。
  • 消費者庁は、平成23年(2011年)2月に、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」〔外部リンク〕を公表しました。この指針では、食品事業者に対して、トランス脂肪酸を含む脂質に関する情報を自主的に開示する取組を進めるよう求めています。
  • 厚生労働省は、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的に「日本人の食事摂取基準(2020)〔外部リンク〕を定めています。この食事摂取基準では、脂質に関して、総脂質飽和脂肪酸多価不飽和脂肪酸の目標量(※1)や目安量(※2)の基準を定めています。トランス脂肪酸については、健康影響が飽和脂肪酸に比べてかなり小さいと考えられること等から、目標量は定めていません。ただし、WHOが2003年からトランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギーの1%に相当する量より少なくすることを目標としているため、厚生労働省もトランス脂肪酸の摂取量を総摂取エネルギー量の1%相当より少なくすること、1%相当より少ない場合でも、さらにできるだけ少なくすることが望ましいとしました。
    ※1  生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
    ※2  一定の栄養状態を維持するのに十分な摂取量。
  • 農林水産省は、引き続き関係情報の収集・解析を行うとともに、国民の皆様が健やかな食生活を送ることができるよう、ウェブページなどを通して情報提供を行っていきます。なお、食品安全委員会は、健康影響評価の結論で、「リスク管理機関においては、今後とも日本人のトランス脂肪酸の摂取量について注視するとともに、引き続き疾病罹患リスクに係る知見を収集し、適切な情報を提供することが必要である」としています。

(出典:農林水産省HP)